コロナによる医療の逼迫について

2020年‐2021年にコロナによる医療の逼迫が叫ばれた。コロナは感染力のある疾患のため、コロナでない患者と隔離する必要がある。そのため病床が足りなくなり、他の病気の患者や救急の患者を受け入れることができなくなる状態だ。今は違うが、コロナが日本に入ってきたばかりのころは、退院の基準が「PCR2回陰性確認まで」だったこともあった。そのためウイルス感染の極期が過ぎてもう何の症状もリスクもない患者が退院できず、病床を埋めてしまっていたこともあった。さすがにこれは現在では見直されている。

2024年8月現在はどうか。患者数としては今も非常に多い。しかし発熱外来でコロナと診断された場合、その多くは解熱鎮痛薬±抗ウイルス薬で帰宅する。自宅療養だ。症状が強く出る人も多いため、感染するとつらいが数日で回復する。若年でリスクがなくとも高熱で食事がとれないような場合は数日入院することもある。

肺炎を伴う、呼吸不全を伴うような患者もいる。この場合は入院で抗ウイルス薬やステロイド、併発した肺炎の治療などを行う。回復し全く元通りの日常に復帰する人もいれば、中等症から重症に移行して亡くなる人まで経過は様々だ。現在も複数のコロナ患者の入院主治医をしている。

2024年8月現在コロナによる医療逼迫の原因はなんなのか。

強い感染力による隔離の必要性や重症化する場合がある点は2020年と同様だ。病床逼迫の原因はADLの悪い高齢者である。

例えば高齢者施設内でクラスターが起こり、もともとぎりぎりのADLであった患者が感染し急性期病院に運ばれてくる。数日隔離しコロナは改善した。幸い重症化もしなかった。しかし隔離とコロナでADLや認知機能の悪化が進んでしまった。元居た施設に戻れない状態になってしまっている。次なる施設探しに難航する。

例えば老々介護で何とか生活していた夫婦がそろって感染した。食事がとれないので入院する。やはりADLや認知機能が落ちてしまい、二人暮らしの継続は困難になる。。

例えば身寄りのない、すでに生活が破綻していた人がコロナに感染して・・・

上記のような例が至るところで起きている。自宅ではみれない。家族は世話ができない。施設もこの状態では入れない。結局「急性期病院で次の施設が決まるまで」だとか「リハビリして入院前と同じADLに戻ったら」ということで入院が長引き病床が圧迫してしまう。

こうして医療従事者の疲弊や、他の疾患の救急対応の遅れが進んでしまう。

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