医師のストレスを言語化する

体調を崩しており、ブログを書けていなかったが、特に誰にも迷惑はかけていない。

他の職種と同じように医師にもストレスは存在する。よく命に関わる職だから、ストレスや苦労も多いのではないかと言われたり、高給を主に保険診療でもらっているのだから、大変なのは当然だろうという意見がある。これについては反論したい。

まず命に関わる職というのは他の職にも多い。消防士や水道管理の仕事もミスすれば命に関わる、健康を害する。飲食業だって建築業だってミスが命や健康を害するだろう。バスや電車の運転手、電気工事の仕事・・・医師は病気の診療をしているためわかりやすいだけなのだ。

高給を保険診療でもらっているという点。まず、少なくとも保険診療の勤務医はさして高給はもらっていない。平均をとれば、日本全体の労働者より確かに高給だが、当直、オンコール、時間外労働、論文や教科書を読んで勉強する時間など考えると、時給にすれば少し高い程度だ。若い外科医など、時間外勤務が多すぎて、同じ病院のコンビニのバイトよりも時給が安いといった話もあるくらいだ。20歳代で年収1000万超えは再現性をもって誰でも可能だが、入学、進級、国家試験などのハードルを考えると、「堅い仕事だが、楽して高給ではない」と言える。

開業医で成功している先生や、自由診療で成功している先生は上は年収億越えもいるが、それはたぐいまれなる技術あるいは、お人柄でたくさんの患者を診療した結果だ。それは医師としての成功というよりは経営者としての成功である。おいしいラーメンを作りお客さんをたくさん集めればラーメン屋ですごく儲かっている人もいる。それと変わりはない。よい診療をして、たくさんの患者を診た結果である。

さて医師のストレスの話に戻す。

よく言われるのは当直だが、夜中に重病人がきて診療する。確かに大変で眠れないのだが、これは医師の仕事であり、自分は疲労は感じてもストレスは感じない。むしろ夜中に看護師から不要な電話がある方がよほどストレスである。なぜ当直にストレスを感じる医師が多いのか。それは報酬と労力が合わないからだ。一晩救急対応をして、報酬が10000円という場合もある。これでは「10000円払うから帰って眠らせてくれ」となるのは当然だ。18時-翌朝8時まで14時間で10000円なら時給は700円台だ。

治療が上手くいかない、患者が治らないストレスは確かにある。しかし、学会や論文で推奨される標準治療を行う場合がほとんどで、それでも治らない場合はどうか。上手くいかない原因の検索や勉強は当然行うが、ある意味仕方がないケースも多い。「自分が治療しても日本一の先生が治療しても上手くいかない」というケースもあるのだ。それよりも転帰について、患者やその家族と揉めること、ごねられることが非常にストレスだ。「なぜ入院中なのに肺炎(脳梗塞や心筋梗塞)を起こすのか」、「なぜ父の肺癌が治療しているのに進行するのか」「(医学的な正しさはわからないが)あの治療をなぜしないのか」など、不当にごねられることも多い。馬鹿につける薬はないですよと言いたくなる。

もう一つは職場の人間関係だ。多くの社会人のストレスはここにいきつく。他の医師と治療方針でもめるような場合はまだ健全だ。各々少なくとも自分がよいと思う治療を提案しているのだから。他の科の医師から「なぜこの患者をうちの科でみるのか」「こんなになってから紹介しやがって」ということを口汚く言われる場合などもある。医師は社会性が低いのかと思いたくなるような場面だ。看護師との軋轢もそうだ。指示したことをやっていない。指示していないことする。挙句こちらに悪態をつく・・・。医学的に間違ったことを声高に主張したり、私は医師より知識があるのだというスタンスを崩さない看護師もいる。

地味に大きいことは電話のストレスだ。病院からの電話でよい報告はありえない。大体が患者が調子が悪いあるいは処方や点滴の依頼などだ。電話が実際ならなくとも、「電話がくるかもしれない」という状況はそれ自体がストレスが大きい。電話機能のないスマホに換えたいくらいである。

コロナで医療の社会的な負担に対する批判の声も大きい。自分も現在の医療体制の維持は困難と思う。しかし医療はなくなることはないし、自分も医師以外の職業を生業にすることはないだろう。少しでも負担、ストレスのない環境を自分で作り上げたいものだ。

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