働き方改革が叫ばれて久しい。近年は当直明けは休みにする、夏休みや有休、男性の育休など医師の労働環境も改善に向かっている。私が医師免許を取得した十数年の間でもかなりの変化があった。私の両親の世代の医師達などは休日回診にいかないなど考えられないという人も多い。良し悪しだとは思うのだが、私のように、「帰っていいならラッキー」とばかりに帰ってしまう医者にとっては半強制で働かされることが、研鑽の意味ではよかったのかもしれない(早く帰りたいが)。
有休や明けの休みなどは当然の権利だと思う。それを主張することは別に悪いことではない。
最近は研修医への接し方も大変に気を遣う。「彼氏(彼女)はいるのか」くらいの会話でもとらえようによってはセクハラ扱いされる。少し忙しいと病む先生もいる。衝撃的だったのは中心静脈カテーテル挿入など、手技を「やってみますか?」ときいても「いや、将来使わないので大丈夫です」と返ってくる場合もあるらしい。私は若手の教育に全く興味がなく、つつがなく研修を終えてくれさえすればいいと思っているのでほとんど何かを依頼する、やってもらうことはないのだが、そう言われてしまうと教える気がなくなる。ただでさえないのに。まあ教わりたくない研修医とはwin-winかもしれない。自己弁護すると、やる気があって、質問してくるような研修医には私が教えられることはなんでも教えるし、そういった先生もたくさんいる。
一度だけ研修医にキレてしまったことがある。詳細は省くが、私の患者に大変に不遜な態度をとった。心情を言語化するなら「今すぐ視界から消えてくれ」であったが、本人には「患者とスタッフに謝罪して、態度を早急に改めなさい。それができないのなら少なくとも私の患者は診療しないでくれ」と伝えた。研修医に怒ることなどまずない私の怒りに彼は面食らったようではあった。形ばかりの謝罪はしたが、その後の彼の評判を聞くと態度は改まることはなかったようだ。怖い上級医にはペコペコし、患者と医師以外のスタッフには尊大な態度をとり続けたようだ。
この一件は特に問題になったりはせず過ぎ去ったが、医局長には以下のように言われた。「研修医を叱ると来なくなってしまうことがあり、そのきっかけがうちでは困る。言い分はわかるがこらえてくれ」と。
指導する側がこのような態度で医師が育つのだろうか。教えを受ける側に迎合するような姿勢でよいのだろうか。
理不尽な罵声や人格否定を行ってはならないように、ダメなものはダメと指導しなくてはならない。将来使わないような手技や知識でも、それを選択したのは本人であるので、少なくとも業務時間内は依頼された仕事をしなくてはならない。
約10年前は研修医であった立場からみると、将来使わないと思い、実際全く使っていないが循環器内科でカテーテル治療をかじらせてもらったことや、麻酔科で麻酔管理を教えてもらったことなど、まあ役にたっている。整形外科で教わった膝の穿刺で何人も偽痛風を診断している。万事塞翁が馬だ。
むかつく上司も多く、正直役に立ったことのない研修が多いのも事実。まあ回った科の先生が「何をしたら逆鱗に触れるか」を学ぶだけでも十分価値はあると思う。膠原病内科にステロイド導入してから紹介するとかね。
上記は昨今の研修医への接し方を言語化したつもりだ。しかし心情的には以下のように思う。
最近の研修医うたれ弱すぎないか?と。少し知識や準備の不足を指摘されたからといって、研修を全うできない医師が多い。
注意は他の人がいない場所で、とか、ほめるところを見つけてほめてから注意する、とか、正直馬鹿じゃねーのと思う。研修医も仕事なのだから、興味のない科を回る1.2か月くらい、せめてやる気があるフリをすればいいのに。
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