どの科にも素晴らしい先生、精力的に患者のために働く実力のある医師はいる。その逆もしかりで、どの科にもくだらない先生はいる。人間的にも医師としての実力も低い医師のことだ。
しかしなぜか舐められやすい科はある。総合診療科は特定の臓器の専門性を持たず、幅広くみることを掲げた科で、見かけ上専門性が低いため舐められやすい。ハイパーに働く院長から舐めた発言を受け、医師達が一斉に退職したらしい。医師が10人以上一斉に退職すると病院が非常に困ることは想像に難くない。
「科に貴賤はない」とはよく言われることだが、外科医や件の院長のような循環器内科医はマイナー科や精神科など比較的負担が少ない科を馬鹿にしている医師も見受けられる。自分も呼吸器内科という「めちゃくちゃハイパーではないが、ハイポとは言えない、呼吸という生命維持に不可欠な臓器の専門」を選んだのは舐められたくない、重宝されたいという思いがある。しかし外科医は目の治療はできないし、循環器内科は皮膚疾患には明るくない。難治性のせん妄が起これば精神科にコンサルトしているはずだ。お互いが得意分野を活かして良好な関係を築けるとよいのだが。
しかし一例を考えてみよう。いわゆる「9時5時科」の先生がルールを無視して時間外に不適切なコンサルトをしてきた場合はどうか。これが例えば激務だと分かっている科の尊敬できる先生なら「きっと忙しいのだろう、診よう」となるところだ。しかし暇だと思っている先生が、ましてや少しでも横柄な態度であろうものなら「暇なんだからルールを守ってコンサルトしてこい」となるのは人情ではないか。それを表に出すかどうかは別として。こうしたことは日常的に病院では起こっている。そして「9時5時科」と「朝も夜も働いている科」の医師で給料は変わらないのだ。大学病院ならバイトのいきやすさなどで、負担が少ない科の先生の方が給料が多いといったこともある。
やはり科ごとに給料を変える、あるいは業務ごとに給料を変える方が合理的と思う。
私の選んだ呼吸器内科は患者数に比して医者の数がとりわけ少ない科だ。また医師の局在の適正としてざっくり「医師の5割が内科」というのが良いバランスだ。しかし最近は内科を選択する医師は3割台で、一学年当たり10%以上、1000人以上内科医が足りていない。外科も産婦人科や小児科も足りていない。一方で充足しているのは精神科や麻酔科、皮膚科や眼科などだ。最近だとそこに自由診療系の美容外科も入る。内科系だと負担の少ないとされる糖尿病内科医も増加傾向だ。
福岡記念病院の偉い先生は外来や病棟患者を精力的に診療しておられ、土日も出勤しその手当をうけとっていないらしい。ある意味素晴らしい医師で使命感と実力を兼ね備えておられるのだろう。しかし総合病院のトップとしてはどうだろうか。そのような先生の元で働きたい医師は少ない。
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