週に平均1.5回当直している。年間で70‐80回の当直だ。その内70%はいわゆる寝当直。30%は救急車を受ける、寝られることもある当直だ。回数は医師の平均よりは多いと思う。内科医の宿命といってもよいだろう。
20代は当直をせずに自宅で眠ることは損したような気さえしていた。老人病院で寝れば給料がもらえるじゃないか。呼ばれて起こされたとしても、それ以外の時間休めばよいではないか、と。しかし30歳代中盤の現在は可能なら当直はしたくないと考えている。月2回くらいが適正だというのが体感だ。これが体力のある医師ならまだまだ当直ができるというだろうし、ハイポ志向の先生なら「当直は卒業したよ」というだろう。人によってすごく差がある部分だ。
全く根拠のない数字になるが、一週間に一回以上のペースでの当直は寿命を縮めるように思う。たとえ慢性期病院の寝当直であってもだ。
まず自宅の自分のベッドでないところではパーフェクトな睡眠はとれない。高級ホテルなどでも落ち着かず十分休めないこともあるくらいなのだ。ましてや当直なのでいつ電話が鳴るかわからない。どれほど「呼ばれない」老人病院でも心肺停止の場合は医師が死亡診断をしなくてはならない。
さらにその時間は病院に拘束される。家族と夕食を取り、会話をし、風呂に入って休む。そうした時間が失われる。父親が一週間の内2.3日家を空けるからといって子どもの成長にはあまり関係ないだろうが子を持つ父の楽しみとする時間が奪われる。
また、生活リズムが崩れる。18時に当直室に入り、呼ばれるまでとりあえず仕事はない。部屋には自分一人でベッドがある。勉強や仕事の続きをする場合もあるが、日中の業務をこなした後だ。疲れて眠り、目を覚ますと23時。眠れず朝までだらだら。これは寝当直あるあるで、どの先生も経験があるだろう。
当直室の環境も多くの場合パーフェクトではない。温度や湿度、清潔に問題があったり、食事の量や質(田舎では当直医の食事は検食を兼ねている)などだ。
数え上げるときりがない。しかし大学病院の医師の給料はこうした慢性期の病院の当直に支えられているし、多くの慢性期の病院も月30日の夜間体制をアルバイトなしに維持することは難しい。それでも周りの労働者からすると恵まれている。一応は空調の効いた部屋で空いた時間はベッドで休めて、時給もよい。神バイトと呼ばれる部類だ。資格職の強みと言える。医師の仕事を他業種へ、という方向が進んでも死亡診断を医師以外ができるようになるのはまだまだ先だろうから。
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