医師国家試験は少し不思議な試験だと思う。以前にかなり難しい試験であると書いた。合格率90%程度の数字に騙されてはいけない。
「医学部入試を突破し、各学年の進級試験を突破し、卒業試験を突破し、病むことなく医学部を卒業した」
人々が受ける試験なのだ。例えば司法試験は非常に狭き門であるがに受験自体は誰でもできる。もちろん最難関資格試験であることは間違いないのだが。
さて、それでも受験者全体からみれば9割が合格する。さらにいうと、現役生‐2浪までで6年間で卒業した人は95%は合格する。特にひらめきやセンスが必要なものではなく、既知の知識を問う問題だ。他の多くの試験と同様、過去問対策が試験勉強の大半を占めている。範囲自体は非常に膨大だが、知識量勝負なので、暗記力と日本語の能力が問われる試験だ。
不思議、と書いたのは各大学の合格率だ。ほとんど入学難易度と相関しない。例えば例年合格率の高い大学は自治医大と順天堂大学だ。どちらも難関大学だが、医学部の中で最難関とは言えない。旧帝大、旧六大、慶応、慈恵などは難関だが、自治医と順天堂の方が合格率が高く、その2大学は毎年100%に近い合格率である。取り分け進級に厳しい大学でもないので、大学の国家試験対策が優れているのだろう。最難関である東大理Ⅲは例年医師国家試験の合格率は中の下で90%前後。入学時点ではあれほどの学力、能力を持った人々がなぜ医師国家試験に落ちるのか理解に苦しむ。どの大学でも一定数不真面目な学生はいるのだろうが、それでも東大理Ⅲに入るほどの能力があれば医師国家試験は突破できそうなものだ。国公立No2の京都大学も平均的から中の上くらいの合格率であることが多い。
今日から行われている共通試験(私の時代はセンター試験)と医師国家試験は本当に思い出深い試験だ。どちらも必死の思いで突破した。よくできる受験生は「全然勉強してないわ」だとか「正直余裕だったから」と言う人もいる。そうした人々より、自分は試験を味わい尽くせた。
コメント