私が医師国家試験を受験した時は3日間の試験であった。すごくつらい三日間であったと記憶している。もう二度と受けたくない試験であり、11年たった今でも試験ができない夢をみる。
合格率9割の試験であるから、一見易しいようにみえるのだが、
医師国家試験は本当に難しい
と強調しておきたい。
現役や一浪で医学部に合格し、学年で中の下くらいの成績をkeepして、留年せず卒業した人にとっては「普通に受かる試験」かもしれない。そのため医師になった人の中でも国家試験は苦労しなかった、普通に受かったという人が多い。典型的な生存バイアスだ。
まずご存じの通り医学部入学がかなり難しい。自分が卒業した地方のいわゆる駅弁大学や、私立の中では入りやすい川崎医科大学、帝京大学なども偏差値60を軽く超える。その入試を突破した人の内、3割程度は留年する。進級の壁に阻まれるのだ。メンタルをやられる人もなぜか他の学部より多いらしい。
全て突破し、医学部卒業の資格を得た人が受けられる試験が医師国家試験だ。その中で約1割は落とされる(ほぼ相対評価である)。
当時MECにおられたHZM先生のビデオ授業で、試験前の4か月ほどは必死に勉強した。今まで勉強不足で4年生のCBTなどは学年で最低クラスであったので、合格か不合格かどちらでもおかしくなかったと思う。ストレスで髪も薄くなり、食欲も落ちた。元々やせ型であったが体重は5㎏減った。
HZM先生がいなかったら私は合格できていなかった。本当に感謝している。病態生理から学ぶ、よくまとまった授業が本当に私を救ってくれた。今の仕事の礎にもなっている。
試験当日、初日のしょっぱな、Aブロックは散々な出来だった。一日を通して出来が悪い。必修は合格点だが一般問題の点が足りない。しかし周りも今日は難しかったと言っている。例年通り初日は難しいようだ。
二日目、やはり解ける問題が少ない。凡ミスもあった。これはまずい。しかしもう二度とこんな試験は受けたくない、いやだいやだいやだ・・・あれ、解ける問題を探すうちに最後まで来てしまった。手を挙げ、トイレにたって、嘔吐する。この日の夜、禁断の自己採点をしてみる。明らかに点数が足りていない。落ちたらどうするのだろうと絶望しながらも疲れ切り、ホテルで浅い眠りにつくと朝だった。
3日目、すでに医者になっている友人や家族から激励のラインが届いている。返信は全てこの一言であった。「Never give up」。この48時間ほどは固形物を食べられていない。頭が回らないと困るためウイダーインゼリーとレッドブルを流し込み試験に向かう。さすがに例年易しいことが多い3日目だ。それなりに解ける問題も多い。いくつか選択肢を2択にしぼり、その都度考える。「これ外したら一年人生が遅れてしまうのか」と。
試験終了後、合格ラインと言われるところをすかさずネットで検索。自己採点サイトにも入れてみた。ギリギリ足りているはずだが、答えがはっきりしない問題や少しのマークミスで落ちる位の点数のようだ。合格発表まで約1か月。何をする気にもなれず、ただただパチスロと麻雀、SEXに明け暮れていた。余談だが、この一か月は人生で一番ギャンブルの収支がよかった。
合格発表の日、なかなかつながらないサイトにイラつきながらも、自分の番号を見つけて本当にうれしかった。当時付き合っていた同級生と抱き合って喜び、大学と両親に報告し、寿司を食べた。不眠や食思不振、脱毛、皮疹は瞬間的に改善した。
多くの人が通過儀礼的に通る試験だが、私にとっては死闘であった。
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