「〇〇でがんが治る」は全部詐欺①

人気youtube「令和の虎」主催の岩井さんが、自身が肺がんに罹患したことを公表された。発覚時すでに遠隔転移を伴っており、Stage4とのことである。標準治療(おそらく殺細胞性抗がん剤と免疫チェックポイント阻害薬の組み合わせで行う化学療法)と並行して民間療法も行っておられるようだ。私は令和の虎のファンであり、いつも楽しく見させてもらっている。治療がうまくいくように陰ながら応援している。

以下はフェイクが入った創作として読み進めてほしい。以前診療した肺がん患者さんで、肺がんの患者さんとしてはまだ若年と言える女性だった。細やかな気遣いができ、いつもにこにことしていた。私は彼女が好きだった(当たり前だが患者として)。

ある遺伝子変異が検出され、肺がんは発覚時かなり進行していたが、これから治療と補助療法をするところだった。さあ説明をして治療導入の予定を組もうという外来に患者はこなかった。

「予約日を勘違いしているかもしれません、電話連絡してください」と指示したが、連絡はつかなかった。翌日何度目かの電話で連絡がついたが、電話に出たのは友人と名乗る女性だった。「△△さんは別な民間療法で治療を行うことになりました。もうそちらの病院にはいきません」。本人につなぐよう伝えたが、取りつく島もなく、電話は切られてしまった。それ以後は何度か病院から彼女へ連絡したが、電話がつながることはなかった。

数か月して、患者の息子(遠方に住んでおられるようだ)に連れられて、△△さんが来院した。肺がんが進行し、食事もとれなくなり、歩くこともできなくなったようだ。肺がんで進行の早いものはこのような経過を十分とりうる。息子に話をきくと、どうも癌が治る壺だかパワーストーンだかを高額で売られ、それに祈りをささげると肺がんが治るという話に騙されてしまったらしい。がんの治療薬はがんに栄養を与える毒だから病院には行かないようにと伝えられており、電話がつながらなかったのだと。平均的なサラリーマンの年収をはるかに超える額を支払い(彼女は一般的な経済状況の方である)、いよいよ食事がとれなくなり、このままでは死んでしまうとなった息子が連絡したら「それは病院に行ってください」といったきり、連絡がとれなくなったのだと。

すでに全身状態が悪くなってしまっており、その後の転帰は想像に難くない。

②に続く。

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