民間療法や自由診療の全てを否定するつもりはないが、標準治療を超える効果のあるものはまずない。もしあればそれは遠からず論文化され標準治療にとってかわる。「標準」という言葉に一般人は惑わされるかもしれないが、既知の最高峰の治療である。それでもその民間療法やがんの自由診療を行いたいのであればまず「①少なくとも身体に害がなく」「②極端に高額でなく」「③標準治療と並行して」することが最低条件である。令和の虎の岩井さんのような方の場合は②はあまり気にされないのだろうけど。大金持ちでしょうから。個人的には患者が納得できたこと以外の効果はまずないし、よくて「毒にも薬にもならない」だろうと思っている。
職を失い、自分も我が子も腹を空かせているとなれば泥棒や強盗をする人はいるだろう。自分の人生で譲れない部分を踏みにじられれば暴力に訴える人はいる。そのはずみで人を殺めてしまう人もいる。これらをもちろん肯定するわけではないが、心情は理解できるし、そうせざるを得ない状況に陥った境遇そのものは同情することもあるかもしれない。
しかしがん患者の不安や精神的な弱みに付け込んで私腹を肥やす、そんな輩はある意味上記した犯罪よりも罪が重いのではないか。「たちしょんべん」は軽犯罪だが「友情や信頼を裏切る」ことは犯罪ではないのである。はたして罪が重いのはどちらだろうか。
以下は私が実際に見聞きした「〇〇でがんが治る」の〇〇の部分である。
・黒ニンニク・・・値段も1か月1万円以内でちょっと割高なおやつ感覚。少し元気になりそうな気もするしまあOK。当然がんには効かない。
・体を温める機械・・・温熱療法という分野もあり、100%インチキではないが、売っている業者はおそらく効かないとわかっている金儲けであろう。聞いた話では約30万円。高すぎる。エビデンスは当然なく、がんには効かない。サウナ行けば一回数百円。
・壺、パワーストーン・・・千差万別だが今回のエピソードでは1000万円近い。天下の重罪人である。さらに許せないのは体調を崩した患者をみはなしてとどめの精神的な苦痛を与えたこと。
・イベルメクチン・・・昨今のコロナ騒動で脚光を浴びたイベルメクチンを使ってがんを治したいといった患者の話をきいた。当然がんには効かない。
がん患者の藁にも縋る思いは痛いほどわかる。日々そうした患者の診療にあたっているからだ。
民間療法をどうしても受けたいのであれば「①少なくとも身体に害がなく」「②極端に高額でなく」「③標準治療と並行して」これだけは守っていただきたい。
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