ある先生が「救急外来に不適切な受診などない。あるとしたら疲れている医師の頭の中にのみある」と言った旨の発言をしておられた。そしてそれは反対意見が多く、炎上している。私も過去に何度も「救急外来は緊急性のある疾患を見るための場である」だとか「平日の時間内にこれないから来る場所ではない」とポストしている。記憶の中には医療従事者からの極端な反対意見はみられなかった。
実際はそこまで厳密に適切、不適切を判断しているわけではない。少なくとも有症状であればもちろん診察と検査をするし、「さすがにこれは平日でいいのでは?」と思っても診療している。勘弁してほしいのは以下の3つである。
●移動手段がないため救急車できた。
救急隊、病院スタッフ全てが疲弊するばかりか、救急車が必要な人に回らなくなるおそれもある。タクシーか公共交通機関で来ましょう。
●平日は(仕事などで)これないから来た。
これは以前医療従事者でない方からいくつか反論が来た。有給がとれない職場もある、だとか、医療は社会保障費を使っているのだから時間問わず診療をしろだとか。前者は職場と交渉すべきだし(有給がないのは違法である)、後者については、以前別記事で反論した。
話が逸れてしまったが、上記の二つ以外はまあ少なくとも患者は困っているのだろうし、極端な態度や他の患者やスタッフに迷惑をかけるのでなければまあ良い。
一見「不適切な救急受診などない」という意見は人類愛に溢れた素晴らしい医師の姿勢であるようにみえる。実際に何十年か前などは不適切利用などという話は多くはなかった。自分もあまり不適切だなどと思わずに、淡々と診療しなければならないと思わされたところもある。
ただ不適切な救急外来受診は確実にある。移動手段と仕事の都合、それ以外にも下記のような例がある。
・「数日、あるいは数週間前からの症状(特に増悪したわけではない)」での受診。例えば「1か月前から腰が痛い、考えると気になってきてきた」みたいな場合。平日日中に受診しましょう。これは我々がめんどくさいからだけでなく、専門医(腰痛なら整形外科など)に見てもらえる、検査も十分にできるという患者側のメリットも大きい。
・「医療ではなく、介護の問題」での受診。要するにご高齢の方をご自宅で世話していて、世話をしきれなくなった場合だ。これは当地域では本当に多い。同情すべき点だったり、実際に肺炎など起こしているケースも多々あるため、一概に不適切受診とまとめる気はもちろんない。しかし、介護で患者あるいは患者家族の生活が破綻、疲弊することは以前から予測可能な場合も多い。あらかじめしかるべきサービスや医療機関の準備をすべきである。親の介護問題は多くの子供世代は先送りにして、いよいよ破綻するまで放っておかれている。
・「旅行にいくから風邪をひいたら心配だから風邪薬をくれ」、「飲みすぎた、点滴をすると楽になるから頼む」、「さみしくて受診した」、「お金(食料)がないから来た」、「嫁(など家族)への当てつけで受診した」など、コントのような受診理由があるのだ。
患者側のモラルに頼ることは限界がある。自己負担を大幅に増やす、救急車の有料化などの金銭的に解決するのか、現状のように、医療者の善意に依存していくのか。適切な解決策はわからない。
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