タバコが毛嫌いされる理由

医療を受けるに当たり、喫煙者は本当に毛嫌いされる。私は呼吸器内科なので過半数の患者は喫煙歴がある人だ。タバコを吸うのであれば、手術しない。入院中隠れて吸ったら強制退院させる。挙句の果てにはタバコを吸うのであれば診療しないと言い切る医師もいる。私も急性期病院で治療を受けるのであれば禁煙するべきだとは思っている。

肺疾患はもちろん、循環器疾患、生活習慣病をはじめ、タバコの害は明白である。まさに100害と言える。しかし医師の喫煙者嫌いは行き過ぎていないかと強く思う。

タバコを吸う患者を診ないというのであれば、酒はどうだろうか。こちらも身体に害のある嗜好品だ。酒を飲む人はみないという医師は聞いたことがない。肥満はどうだろう、過度のやせはどうか。睡眠不足やストレスだって身体に悪い生活習慣だ。多くの医師が経験している、24時間以上の連続勤務だって身体にとても悪いだろう。体感的には救急当直ほど体に悪い生活習慣はないと考えている。

なぜかタバコだけ特別視して、嫌われすぎているのだ。

そもそも肺癌やCOPDだって吸い続けてもなる人とならない人がおり、それは体質である(COPDになりやすい遺伝子は一部解明されている)。誰でも食べ過ぎたことぐらいあると思うが、肥満の人がみな糖尿病になるわけではない。塩分過多だって皆高血圧ではないのだ。そこに個人の努力や介入はなく、ただ体質によってのみなる人とならない人が別れている。

臭いからいやだという理由はまだわかりやすいが、それでは高齢者で清潔が保てない患者の診療はしないのか、救急にはホームレスの人だって運ばれてくる。私にはタバコを毛嫌いする医者が、自分が使わない嗜好品で、身体に悪いことが明白なのに吸うことが理解できていないだけではないかと思う。

患者に「吸うと死ぬよ」「吸うならみないよ」といった強い言葉を使っても禁煙率は上がらないというエビデンスがある。ただ禁煙しない苛立ちを医師が患者にぶつけているのではないかと思ってしまうのだ。緩和病棟や慢性期病院などは火事の問題さえ解決できるなら喫煙所を設置した方が患者の満足度は上がるのではないか。

まあタバコは吸う、でも咳は止めろ、肺は治せみたいな無茶ぶりをしてくる場合は無理なものは無理だというしかないが。タバコを吸う呼吸器内科、循環器内科だってたくさんいる。

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