①で少なくとも医療者の99%は高齢者の延命やコロナ診療で全く儲かっていないことを書いた。
次に書くのは実際病気になった人、疑われた人がどう反応するかである。日本人の2人に1人は癌になり、3人に1人は癌で死ぬ。
私は癌を診断した、あるいは強く疑った場合、その患者が75歳以上なら「あなたは(おそらく)肺癌です、検査にも治療にも副作用がある場合があります。まずは検査や治療を受けるかどうか希望を伺います」といったことを聞く。家族も患者本人も多くの場合検査や治療を希望する。平均寿命を超えた方でも疎通がとれる患者は8割方「検査や治療を希望します」との返事が返ってくる。自分で歩けて、食事が食べられて、説明がある程度理解できる場合は希望があれば検査や治療を進めていく。肺癌ガイドラインにはパフォーマンスステイタスといって、患者の活動度で治療の可否を判断する項目はあるのだが、年齢で治療を制限するような記載はない。
74歳以下で疎通ができる患者の場合の治療希望率は90%を大きく超える。例外は肺癌発覚時にすでに病気が進行しすぎていて「治療などしなくてもいいから早く楽にしてくれ」といったケースだろうか。これは同僚の他科の医師達とも議論したが、概ね割合は同じかむしろ治療希望の割合は増えるようだ。すなわち日本人のほとんどは「癌は寿命だ。自分は治療を希望しない、自然な形で」という発想は持っていない。ネット上で声の大きい医療は社会の敵と叫ぶような人たちも年老いて病気が発覚した場合は、大体「治療を希望します」となるのではないだろうか。いや自分はそうはならないといっても、その声の多くは若年から中年で、まだ自分が病気になる、特に悪性疾患を患うことを想像できていないからそう言えるように思う。
上記のような状況で医療費削減や、医師の待遇を下げろという声が出る。これは大いなる矛盾ではないか。大体の人はいざ病気になると「治療してください」となるのである。死生観の教育が圧倒的に足りていない。メメントモリとはなんと含蓄のある言葉だろうか。
過剰医療への一番の対策は死生観の教育からだと思う。死ぬときは死ぬし、死ぬときは死ねばいい。
・・・私の豊かな生活のためにも医師の給料は下げないでほしい。
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