病院での同意書について

医療行為に対する同意書の多さには辟易する。何をするにも同意書同意書である。例えば手術、例えば透析など侵襲性が高い、その後の人生にも大きく影響してくるものは説明の上同意書をとってもよいと思う。胸腔穿刺や中心静脈カテーテルなども大きくはないがリスクがあるのでまだわからなくもない。抗がん剤も副作用の多い治療であり、100歩譲ろう。

インフルエンザワクチンの注射や抗菌薬の投与にも本当に同意書が必要なのだろうか。それらの医療行為にリスクはないとは言わないが、確率的に重篤になる可能性はとても低い。何よりメリットが勝ることが現時点ではっきりエビデンスがある。そうした行為にまで同意書を求めることが必要なのだろうか。不要な書類作業や事務作業を省くことができれば医療現場での働き方改革は実現すると思う。

さらにいうなら私の10数年の経験で、同意書を取り忘れて困ったこともないし、同意書に救われたこともない。中心静脈カテーテルを挿入する際は気胸のリスクは当然説明するが(数%で起こりうる)、同意書を取っていたからといって、気胸で患者が重篤になった、死んでしまった場合に「同意書があるのだからあなたはリスクを承知で治療を受けたのですよね」と言われて誰が納得するだろうか。

さらにいうと司法も上記のようには見てくれない。同意書があったからといって業務上過失致死に当たらないという判決はでなかった例がいくつもある。つまり医療者を法の点から守ってくれる書類のように思うかもしれないが、そんな効力はないのだ。ただ煩わしいだけの書類である。

ゼロリスク信仰と呼ばれる日本人。その信仰のせいで年々増えていく書類仕事。「すべての医療行為はリスクがありますが、こちらがご提案するものはすべてメリットがリスクを上回ります」というくらいざっくりの認識でいいのではないか。

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