老害

私は10数年急性期病院に常勤として勤務している。そのため部長、科の長などの多くはその道数十年の医師だ。急性期病院の部長や、大学病院の長などは腕に覚えがある先生が多い。精力的に働かれ、勉強もたくさんされたであろう。論文や研究など学術的に優れた人も多い。

一方で高齢医師(50歳代後半-60歳代以降)の先生はトンデモ診療をしている医師がいる。明らかにガイドラインを逸脱している場合や、頓珍漢な処方などだ。また機械に疎いのか、高齢開業医などは手書きの紹介状を送ってきて全く読めない場合もある。

さらにやんわりと周りに注意され、改善するケースはほとんど見ない。医学の知識はアップデートされているにも関わらず、「私はこれで数十年やってきた、だからこれでよい」と言わんばかりだ。その数十年でたくさんのパラダイムシフトが起こっているのに。未だに天動説を唱えるがごとき医師は実際にいる。さらに自分の診療だけで完結すればまだよいが、間違った知識を周りに啓蒙しようとさえし始める。

医師免許には定年も更新もない。犯罪を犯さなければ(場合によっては犯罪を犯しても)やりたければ延々と医師が続けられてしまう。結果患者に不利益を産むことになる。医師70歳定年説などもあるが、本気で検討すべきだと思う。都市伝説かもしれないが、老人病院に入院している経営者一族の寝たきり医師が当直をしていることになっていたなどという話もあるくらいだ。

一方で、金もできた、比較的穏やかに毎日仕事ができている、仕事の引退も見えてきた50歳代後半-60歳代以降に、自分が勉強して手技や知識を磨こうと思うだろうか。何も変えたくない、これまでと同じような仕事を苦痛なく続けていきたいと思うかもしれない。そして身体と頭さえ元気なら、ずっと医師業を何らかの形で続けたいと考えるだろう。

こうして「年次が進んだため誰も注意してくれない、間違った知識を振りかざす」老害が産まれていくのだろうか。引き際は大切だ。老害と関わることはいやだが、自分が老害になることはもっといやだ。

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