開業医と勤務医は別の職業である

ここでいう開業医はクリニックを経営して、そこで診療している医師、勤務医は急性期病院に勤める医師だ。私は後者である。

どちらも当然医師業をしている。なにがしかの疾患や心身の不調を来した人を治療する点は変わらない。

まずクリニックの医師は急性期病院に勤める医師より不利だ。まず検査が十分にできない。CTやMRIはないところが多いし、採血もすぐには結果が出ない。医師は自分一人である場合が多く、専門外の疾患をすぐに専門の医師に相談することもできない。入院施設もなく、看護師その他のマンパワーも少ない。こうした環境下で診療しなくてはならない。急性期病院の医師達はこうした背景をあまり鑑みず、「こんな(軽症で)送ってきやがって、そっちでやれや」とか「こんな(重症)になってからよこしやがって」だの、「ヤバくなったらこっちに送るだけ、楽な仕事だな」などと陰性感情を開業医にぶつけることもある。

しかし開業医がなくなった場合はどうなるだろうか。高血圧や糖尿病患者それぞれ1000万人単位でいる。私の専門である喘息やCOPDだって、軽症も全て急性期病院で見ることはとてもできない。数が多すぎるのだ。専門では全くないが、アトピーや白内障など有病率の高い疾患はクリニックで診療してもらわないと立ちいかないのだ。以前も書いた訪問診療の先生がいないと、自宅で亡くなった患者の多くは不審死として警察が入ってしまう。

さらに勤務医は昨今叩かれているようにあまり医療費のことを意識しない。自分の給料は変わらないからだ。その点も勤務医は有利である。いくら病院が手出しをしようが関係がない。

経済的なリスクは開業医はある。経営者なのだから当たり前なのだが、建物も機材も、人件費も払わなくてはならない。勤務医は訴訟リスクはあれど(開業医も同様だが)、経済的なリスクはほぼ0だ。研修医が終わっていればフルタイムなら年収1000万程度は固い。労力に見合うかは別として一般的には立派な年収だ。

上記ほど違いがあるのだ。限られたリソースでトリアージをして、軽症例や生活習慣病などをみる開業医。入院が必要な症例や比較的重症例を病棟や外来で診療する勤務医。サッカーと将棋位違う・・・とまではいかないが、サッカーとフットサルよりは違いがあるように思う。

診療報酬の改悪(医療従事者にとっては改悪だが一般人にはどちらかわからない)やコロナ禍、医療者叩きなどでどちらも困っている。世論は医者ならすべて一様に話しているが、実はかなり違う業務にあたっている。

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