2010年南アフリカワールドカップ

サッカー日本代表監督は歴史上叩かれなかった監督はいない。加茂監督やオフト監督も叩かれていたし、最近だとハリル、アギーレ、ザッケローニ、現監督の森保さんも常に批判に晒される。ネットが発達したこともあり、賛否の否の部分が目立つ。

私の記憶にある限り、最も叩かれた監督は2010年南アフリカワールドカップの岡田監督だろう。親善試合で負けが込んで、とても本戦で勝てる雰囲気はなかったし、日本中がそう感じていた。ベスト16常連の国と比べるとどうしても戦力差が大きく、誰が監督をやっても厳しい戦いを強いられるのだが、本戦直前のトレーニングマッチが結果も内容も悪かったこともあり、「とにかく監督を変えてくれ」という声が非常に強かった。しかし日本サッカー史上でも有数の勝負師である岡田監督は座して死を待つことはしなかった。エース級であった中村俊輔をスタメンから外し、最もキープ力と馬力のあった本田圭佑をワントップに起用。阿部勇樹をアンカーに置くことで押し込まれることが予想される守備を安定させ、松井、大久保にサイドの上下運動の役割を与える。奇策は中々成功しないから奇策なのであるが、これは見事にハマった。当時最強のストライカーであったエトーを擁するカメルーンを相手に本田の挙げた一点を守り切り勝利したのである。この時点でかなりの手の平返しが日本中で見られた。勝負師岡田の真骨頂ともいえる采配であった。

私が最も印象的であったのは唯一敗北したオランダ戦である。スナイデル、ロッペン、ファンペルシーという世界的アタッカーを擁する優勝候補。欧州予選も危なげなく通過した難敵が相手であった。闘莉王、中澤を中心に固くブロックを引き人数をかけて守る、いわばドン引きである。初戦を制した日本代表は引き分ければ十分すぎる結果だ。スナイデルのあまりに強烈なミドルシュートに失点したものの、豪華な攻撃陣にほとんど決定的なシーンは作らせなかった。試合は圧倒的に支配されていたが、反撃を捨てていたわけではない。失点後も全員が集中力を切らさず守り、少ないながら同点を狙ってオランダゴールを脅かすシーンもあった。オランダも追加点を挙げることは叶わず、最後まで苦しかったであろう。準優勝国を最後まで苦しめたのである。

そして迎えたデンマーク戦、あの伝説とも言える本田、遠藤のフリーキックが決まり見事グループリーグを突破した。下馬評を覆し、日本中に手の平返しをさせたのである。

弱者が強者に勝つ、あるいは勝てないまでも最後まで戦い苦しめる。美しいサッカーをみることも楽しいが、泥臭く、気持ちが画面から届くような試合をみることは何より楽しい。

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