専門医をとった時は嬉しかった。とったからといって医師としての実力が上がるわけでもないし、給料にも反映されない。今自分のように医局を離れて就職するときは多少みられるかもしれないが、別に専門医がなくてもできる仕事、求人の方が多い。認定医(今は内科専門医)も臓器別の専門医も特に実利はない。
しかし今の王道というか、多数派は研修医を終えて、大学医局に所属する。そうしてさらに数年後期研修医をやり、専門医をとる道を選ぶ。
医学部は基本的に受験エリートだ。多数派の歩む王道をいこうとしてしまう人が多い。最近自死されてニュースになった神戸の先生などは優秀な大学、消化器内科というメジャー内科を選ばれているので王道中の王道を歩んでおられた。
「死ぬぐらいなら休んだり、楽な道を選べばよかった」などと素人のような意見を書くつもりはない。そうした選択をできない人がうつになり死んでしまうのだ。返す返すも悔やまれる。自分は仕事が人並み(以上)にいやになること、いきたくなくなることはあったが、死ぬほどつらいわけではなかったので、どれほどの苦痛があったのかは想像するほかはないのだが、彼の考える正規ルートから外れてしまうことが本当に恐怖であったのであろう。
若い先生には視野を広げてほしいと思う。ハイパーに5年働いて燃え尽きてしまう位なら、だらだら20年やった方が、本人も患者も幸福だと思う。高度医療機関で難しい手術をする医者も必要だが、老人病院で寝当直をしたり、クリニックでdo処方をする医者も必要なのだから。医師免許の一番の強みであるくいっぱぐれないことを利用して、自分のキャパシティと折り合いをつけてほしい。
真面目で常に成績優秀、勉強熱心という生き方を小中高大として、その能力をいかんなく発揮する医師がいる一方で、なんとか医学部に滑り込んで、なんとか進級して医師になる人もいる。医師の中での能力の格差は大きい。能力の高い人、労働耐性がある人はたくさんいるので、壊れたり、死んだりするくらいなら少し休んでほしい。自分でもできる仕事を探してほしい。そういった仕事はたくさんある。そしてそれは世間一般よりは(場合によってはハイパーに働いている人よりも)高給が得られる。
私が誘って入局した後輩が激務の病院に勤めて精神を病んでしまい、現在休職している。奥さんとも離婚し、非常につらい状態だ。その後輩に向けてこの文章を書いている。彼が読むことはないけれど。書けば書くほど月並みな言葉しかでずいやになるが、本心だ。
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