高齢者医療っていいことなの?④

生活の糧として老人病院で当直をしている。はっきりいってやりがいも使命感も全くない。身体的な負担が少なく給料をもらうことが目的だ。もちろんバイト先の病院で可能な範囲でできることや、自分の力でできることはやるが、できることは非常に限定的だ。コウノドリという産婦人科のマンガの離島の回であったように、最も重要な仕事は死亡診断書を書くことだ。患者は過半数は疎通が取れない、歩行できない人だ。昨今叩かれている点滴や経管栄養で生きながらえている人も多い。

病室は異臭が漂う。排泄物や口臭、人によっては褥瘡や足が腐っている人もいる。臭いものにはふたをする役割をまさに地でいっている施設だ。そうした老人が100人単位で過ごしている。大体24時間勤務なら8万円前後の給与を得るために、社会的には意味があると言い聞かせて勤務している。病棟からの電話で診察依頼があるまでは当直室にこもり、仕事をするなり、寝るなりくつろぐなり自由に過ごす。決まり上は入院施設がある病院は医師が常駐していなければならない。そのために雇われている。

先日定期バイト先として毎週いっている病院でお看取りをした。高齢男性だ。死亡診断書を書くためにカルテをみると入院前まではホームレスであったらしい。道で行倒れており、何とか連絡がついた兄弟が病院に入れたと。道で行倒れるホームレスが病院で医療を受けられる。そんな国は日本ぐらいなのではないだろうか。

カナダで安楽死が合法化され、5年で約4万人が安楽死したという。日本は当面安楽死が合法化されることはないだろう。死生観の教育が全く進んでおらず、未だに長生きが素晴らしいものとの価値観が特に高齢者にはあるからだ。誰が世話をするのか、延命治療は是なのか、そのための金の負担はどうするのか。どれも我が国では答えが出ていない。

「〇〇さんが発熱しました」との電話で、診察をして抗菌薬を処方する。この日本全国どこででも行われている慢性期病院の風景が持続できるのはいつまでなのだろうか。

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