気温が体温を超えるような猛暑の夏だった。今から10年以上前、自分は6年生として最後のサッカーの大会に出場した。東医体、西医体といって、医学部の部活動の全国大会がある。自分にとっては最後の真剣勝負だ。一回戦の相手も同じ地方国立大、偏差値は同程度。練習試合で戦った経験もあり、その際は大敗だった。自分らにとってはかなりの難敵である。
医学部の部活動なので、広義には遊びだ。しかしインターハイ経験者や国体選手、〇〇ユースや○○選抜などもちらほらおり、それなりの実力者もいる。自分の大学ははっきりいって弱小だった。だからレギュラーを取れたのだけれど。
弱小の我が大学のサッカー部は普通に試合をすると順当に負ける。弱いチームの基本に忠実に、ハイプレスを採用し高い位置でボールを奪って間違ってゴールに入れる。あとは80分守り抜く。そういうスタンスで試合に臨んだ。自分はFWとして、「先頭のDF」としての役割を担った。全員の共通認識もあり、その作戦はハマった。技術は劣るが運動量で勝り、相手のキーマンであるボランチを複数人で潰して決定的な仕事をさせなかった。ゴールキーパーのファインセーブも重なりスコアレスで前半を終えた。あわよくば先制点を取りたかったが、ほぼプラン通りの展開である。
後半は相手が目に見えてばてて、試合が拮抗した。こちらも二度ほど決定機を作ったが得点に至らなかった。自分の人生最高ともいえるミドルシュートはクロスバーをたたいた。スタミナもパワーも限界に近かったが、80分どちらのチームもスコアを動かすことはなく、試合はPK戦で勝敗を決することになった。
こちらのチームの一人目、相手チームの3人目が外す。3-3で迎えて自分は5人目のキッカーを務める。PKは得意ではないが、何かが乗り移ったようにノイアーでも止められないであろうシュートを突き刺す。こちらの6人目が外し、相手が決める。私の最後の真剣勝負は一回戦負けで終わってしまった。
自分にとっては人生で最も印象に残っている試合だが、はたから見るとレベルの低い医学生のお遊び大会だし、自己満足の域をでない。しかしそれでも綺麗で、強烈な思い出である。
部活動の是非も叫ばれており、情熱の温度差やケガ、本業である学業への影響なども疑問視されている。自分は部活動をやった方がいいと思っているし、何か打ち込める、打ち込めたものがある人の方が素敵だなと思う。医学部を卒業した時は同時にサッカー部を卒業したとも感じている。
コメント