死に様①

実家で飼っていた猫が死んだ。我が家の猫としては2代目、享年15歳。飼い猫の平均寿命はおそらく過ぎているだろうか。大往生と言ってもよかろう。数か月前からややエサを食べる量が減って、活動性は下がっていたが、亡くなる前日まではまあ普通だった。朝起きると嘔吐しており、動けなくなっていたらしい。年が年なので、なかなかtreatableなものとは思えなかったが、獣医に連れて行った母に告げられた診断は「肥大型心筋症」に伴ううっ血性心不全、慢性腎不全。人間と同じような病名がつくのだと変に感心してしまった。「広義の老衰です」、とまるで普段の仕事中の自分が使うような説明を受けたと。

入院する選択肢もあったらしいが、加齢には勝てないとわかっている母は自宅に連れ帰り、その日の夜中に死んでしまった。日中に猫に会いに行った。特に苦しがるでもなく、何かを要求するわけではない。お気に入りのソファーにうずくまり、撫でるといつも通り「みゃーお」と鳴いて、何を考えているかわからない視線をいつも通りにこちらに向けるだけだ。彼(♂だ)は死期が近いことをわかっていたのではないだろうか、とまで言うのは考えすぎか。その日は両親が近くで眠り、看取った。骨になって帰ってきた彼をみて、ああ、よかったなと感じる。何がよかったのかは自分では言語化することはできない。彼がHappyだったかは知る由もないが、まあそこそこ幸福な一生だったのではと思っている。

なんと美しい死に様であろうか。何を要求するでもなく、ただ死ぬべき時に死を受け入れ死んでいく。我々家族はそれぞれ彼に感謝の思いを持ち、別れを告げたら日常に帰っていく。

②に続く。

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